
12月にHeber Cityに向かう際、元々はMoabに1週間ほど滞在する予定だったのだが、スノーストームが来るという情報を得て、滞在は諦め急ぎHeber Cityに向かったのだった。US6号線は最高部では標高2000メートルに達し、雪が降れば間違いなく凍結し除雪も直ぐには行われない可能性があった。滞在を諦めたのは正解で、Heber Cityに着くまで道路に雪が積もっているのを見る事は無かったが、翌日は一面銀世界だった。
2月に入ると雪の頻度が減り、数日晴れの日が続く事が多くなったので、晴れ間を見てMoabに3泊4日で撮影旅行に出掛ける事にした。Jeepに機材と着替えを積み込んでモーターホームを後にした。
ソルトレイクシティーを抜けUS15号を南下、小1時間程走った辺りで6号線で山に向かう。道路沿いに川が見えたので気を付けていると枯れ木の梢近くに大きな鳥の姿が見えた。白頭鷲は遠目からでもすぐ分かる。道路脇の広いスペースにJeepを停めると、居眠りしていたまーちゃんが目を覚ました。「どうしたん?」と尋ねるので指で白頭鷲を指すと、「え!凄い」と今にも車を飛び出しそうになった。「少し此処に居て」と言い、カメラと三脚を持って外へ出た。大急ぎで三脚にカメラを取り付け早速シャッターを切り始めた。まーちゃんに「もう出て来てもいいよ」と言ったが、彼女は車から出て来なかった。後で尋ねると、iPhoneでは遠過ぎたので、代わりに白頭鷲の写真を撮る俺の姿を撮っていたそうな。やがて餌を見つけたのか白頭鷲が飛び立った。直ぐに木立の向こうに姿を消したが、飛び立つ瞬間は捉える事ができた。気を良くしてJeepに戻り再出発。

Moabのホテルにチェックインしたのは3時前。明るい内にキャニオンランズ国立公園のメサ・アーチ(Mesa Arch)の下見をしておきたかった。メサ・アーチという名前は知らずとも、その写真を見た事がある人は多いと思う。断崖絶壁の上にせり出すよう立つ長さ8メートル程の横長のアーチ。アーチの真下は150メートル下まで抜けている。崖の縁に近づくと、丁度目の高さあたりににアーチ、眼下には広大な渓谷、アーチの下、はるか前方には雪を被った険しい山々が見える。前回来たのは2021年の夏。初めての訪問で前知識も無かった。昼間だったのだが、絶景に圧倒され写真を撮りまくった。超人気のスポットだと知ったのは後の事。夏期は夜明けの写真を撮るのに多くのカメラマンが早朝から列を作るらしい。が、俺は冬の写真を撮りたかった。赤い岩に白い雪が被さり、夜明けの太陽がそれらをオレンジ色に染める。頭の中でそういう絵を想像していた。
現地に着いたのが16時過ぎ。駐車場からメサ・アーチまでの短いトレイルは雪で覆われていた。下見だったが、取り敢えず機材を担いでトレイルを登り始めた。雪は凍っておらず、適度に踏み固められていたので、アイゼンを付けずとも登山靴のままでアーチまで辿り着いたが、真っ暗な中を懐中電灯頼りに歩くのは少し無謀と感じられた。暫く夕暮れのアーチの写真を撮りJeepに戻ったが、その足でスポーツ店に向かいMicroSpikeなる物を購入した。これが後日大変重宝した。スポーツ店の兄ちゃんのオススメのレストランで晩飯を食ってホテルに戻った。



夜明けが7時過ぎ。ホテルからアーチまでは1時間弱。多くのカメラマンが来る事を予測して更に1時間余裕を見ると4時にはホテルを出発したい。色々考え始めると眠れなくなり、結局3時30分にセットした目覚ましのお世話になる事は無かった。通常まーちゃんは一緒に来たがるのだが、流石に眠たかったようだ。彼女を部屋に置いて出発したが、彼女も殆ど眠れなかったらしい。
アーチの駐車場についてみると、未だ誰も来ていなかった。はやる心を抑えながら、装備を身につけトレイルへと向かった。前述のMicro-Spikeのお陰で足元は完璧だった。足早にアーチに辿り着くがやはり誰もいない。人が来る前に夜空の写真を数組撮る事ができた。6時を過ぎると、空が白み始めた。夜空の撮影を終えて、アーチの正面に三脚を設置、万全の体制で夜明けを待った。6時半に最初のグループが現れ、俺の直ぐ横に数人がカメラを設置した。結局夜明けまでに20人程度の人々に囲われていた。太陽がアーチの下に現れると、アーチの下側とその下に広がる雪を被った渓谷をオレンジ色に染めた。想像していた通りの絵だった。暫しシャッターを切り続け、後ろに下がった時には更に多くの人々が居て驚いた。


ホテルの朝食を食べ、部屋に戻って2時間ほど仮眠した。アーチズ国立公園のデリケート・アーチの写真も撮りたかったが、撮るなら星空か夕焼け空を背景にしたかった。デリケート・アーチ迄のトレイルは道標が少なく、岩の上が凍っている可能性もあるので、夜中に懐中電灯を頼りに登るのは危険かもしれなかった。取り敢えず下見を兼ねて午後遅めに行ってみることにした。トレイル終盤、日陰になった部分で岩場の上の雪が氷になっていて、目の前で人がひっくり返った。少し先なら崖から転落していたかも知れない。前述のMicro-Spikeに感謝した。デリケート・アーチは記憶していた以上に大きくて、思いっきり後ろに下がっても持ってきた70−200ミリの望遠ズームの視野には入りきらなかった。標準レンズをJeepに置いてきた事を後悔したが、逆に一気に寄って、14−24ミリの超広角で撮ると上手い具合にアーチと夕陽をフレームに収める事ができた。Jeepに戻った時はすっかり日が暮れていた。二人共結構疲れていて、ホテルの部屋でラーメンを食べてベッドに潜り込んだ。

翌日、ホテルの朝飯を食べながら、どうするかを話し合った。未だ行った事がない見せ場の中で上位にランクされているのが、コロナ・アーチ。国立公園外にあり、トレイルは「困難」とランクされている。取り敢えず行ってみよう、とホテルを後にした。途中ロッククライミングをする人々や、岩に彫られた壁画などを見ながらトレイルの駐車場に到着。まーちゃんはトレイルを歩く気満々。「ま、行きますか」と。カメラバッグの中から、望遠レンズ1本のみを取り出し三脚に固定、肩に担いでトレイルへと向かった。「困難」という割には大変だったのは駐車場から出て直ぐの九十九折りの部分だけ。それを過ぎれば、快適な斜度のトレイルだった。景色も雄大で、まーちゃん曰く、「これまで歩いたトレイルの中でもTop5に入る」位に気に入った。山を回り込むように歩いていくと、大きなアーチが前方に現れた。アーチの下に居るハイカーたちが小さく見えた。そこからアーチ迄の間に岩に打ち付けられた鎖や梯子を使って場面も有り、これも楽しめた。天気に恵まれ冬とは思えない。アーチの下でTシャツ一枚で岩に寝そべる若者達もいた。俺たちもそこでお弁当を食べた。ドローンを飛ばしている人も居た。確かに国立公園の外なのでドローンは禁止されておらず、俺も持って来るべきだったと反省した。




Moabの街はずれに気になるBreweryが出来ていたのでそこをチェックし、その後再度アーチズ国立公園に向かった。目当ては夕暮れのランドスケープ・アーチとガーデン・オブ・エデン。ランドスケープ・アーチの方は既に日が当たっておらず、機会を逸したが、ガーデン・オブ・エデンは適度に雲があり夕陽に染まる良い写真が撮れた。


その日の夜から明日の朝にかけて天気が良くなる予報が出ていた。一旦ホテルに戻り食事の後で夜空を背景にウィンドウズ、ダブルアーチ、バランスドロックなどを撮りに出直すつもりだった。いざ22時頃に戻ると、ダブルアーチとバランスドロックの駐車場にまだ車が停まっていた。まずは車の停まっていないウィンドウズに向かうことにした。トュレット・アーチとノーズ・ウィンドウで其々30分程費やした頃、雲が出始めた。その後ダブル・アーチ、バランスドロックの駐車場にも立ち寄ってみたが、雲が広がっており、撮影を断念した。夜中のモアブの街に戻りコンビニで食料を買い込んだ。その夜はコンビニで買ったジャンクフードを腹一杯詰め込みグッスリ寝た。

翌朝朝食後ゆっくり目に帰途に着いた。今回は良い写真が一杯撮れ充実した旅となった。次回は冬のグランドティトン&イエローストーンの写真を撮りたいと思う。


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